PHILO NEWCOMBE

ファイロ・ニューカム / フィロ・ニューカム

ファイロ・ニューカム / フィロ・ニューカム PHILO NEWCOMBE

ハートブレイカー

インテル

フィロ・ニューカムが生まれ育った家庭はあまりにも幸福感に満ちていたため、当然ながら彼自身も幸せな人生を送るものだと思われた。両親は共にグリーティング・カード会社で再ブームの火付け役として熱愛の末に職場結婚し、一人息子を溺愛した。フィロにとって理想の女性である母親は彼がまだ幼い頃に亡くなったが、これにより完璧な母親像として幼いフィロの心に残り続けた。成長し、批判的思考が発達してからも、フィロは母親に対する作り上げたイメージから脱却することはなかった。父親が再婚した時は、義理の母親が劣っているようにしか見えず嫌悪の気持ちを抱き、さらには父親をも嫌悪するようになった。

18歳で家を出たフィロはバーモント州のロマンティックな職業にあこがれて、州内で盛んだったウェディング産業で給仕とケータリングのアシスタントとしてアルバイトの職についた。この時期、フィロが付き合おうとした女の子たちは、残念ながら母親像によって作り上げられた高い理想を覆すには至らなかった。幸福感も可愛さも、彼に対する愛情も誰一人として十分な人はいない。そんな状況と、職業柄身近にいるという理由で、フィロは職場で見かける花嫁に目をつけ始めた。幸福感も美しさも、愛情も人生において絶頂の花嫁に対し、相手である新郎が不釣り合いだと思えば思うほど、その興味が増した。キャリアを積みウェディングプランナーとしてそれなりの成功を掴むころには、“婚約者を亡くした花嫁の悲劇”に自分も加わりたいという欲求を抑えられなくなっていった。価値のない相手を殺して、お気に入りの花嫁を“救出”したいという衝動を実行に移すのは、彼の立場的に容易であった。

しかし、こうやって手に入れた関係が長続きするはずもなかった。対象が悲しみにくれて元の輝きを失うと、フィロは次の対象、すなわち次の被害者へと目移りした。結局のところ、花嫁の代わりはいくらでもいるのだ。