JORDAN CROSS

ジョーダン・クロス

ジョーダン・クロス JORDAN CROSS

27クラブ

インテル

レコーディングアーティストのジョーダン・クロスは、ニューヨークで活動する有名インディーロックバンド、ザ・クラスのリードシンガー兼ベーシストだ。

世界有数の大富豪トーマス・クロスの一人息子で、幼少期からかなり変わった存在であった。甘やかされていたが世間から隔離され、彼は屋敷の中で育った。専属の精神科医オスカー・ラファイエットは、クロスは「金満病」の典型だと言う。

承認欲求は強いが、他者からの指導や指示をかたくなに嫌う男だ。己の帝国を築き上げることがすべてで、冷たく、他人を巧みに操る父親から解放されたいという気持ちが、彼の行動の原動力となっている。束縛と上流階級に対する反抗が彼の作詞テーマの大部分を占めるのも納得だろう。友人たちは、彼を「バットマンのブルース・ウェインみたいな奴だが、父親が撃ち殺されるのを望んでいる」と茶化している。

芸術に興味を持ったクロスは、ロンドンの名門セント・クレアモントで音楽を学び、後にニューヨークにて、メインストリームのポテンシャルを融合したことで有名になったオルタナティブ・ロックバンド、ザ・クラスを結成した。当初、彼はトーマス・クロスの影から抜け出すことに成功したかに思えた。

ある日の夜、事件は起きた。ガールフレンドのハンナ・ハイムーアと口論中に彼女が転落死したのだ。警察は事故死と発表したが、我々のクライアントである彼女の両親は他殺と見ている。ジョーダン・クロスは、衝動的に犯してしまったほんの小さな過ちで、今まで築き上げてきた成功を失うわけにはいかないと考えたのだろう。そして彼は、自分が最も嫌う人物の力を頼った。そう、父親の力を。

事件の真相はともかく、トーマス・クロスはこれを疎遠だった息子と和解できるチャンスと捉えた。持ち前の政治的影響力でニューヨーク市警に圧力をかけ、メディア帝国と弁護士集団を駆使して、息子にとって有利になるよう働きかけた。すべてが終わった後、世間ではハンナ・ハイムーアがパーティーでハメを外して事故を起こした女性、ジョーダン・クロスが恋人を失ったかわいそうな男というイメージが作り上げられ、皮肉にもザ・クラスの人気はさらに上昇した。

ジョーダン・クロスは才能ある男であり、彼自身もそれを十分自覚している。冷静で自信家だが、時に横柄で乱暴になり、神経質で相手をコントロールしたがる面がある。彼がすばらしいアーティストであることは間違いない。しかし、危険なまでに自分の権利を主張する男で、世界は自分を中心に回っていると信じ込んでいる。ハンナ・ハイムーアの事件は衝動的な犯行だったのかもしれないが、父親の財力と権力で罪を逃れるという行動は冷静に計算されたものだろう。ジョーダン・クロスは、自分に法は通用しないと思っている。それが間違いであると思い知らせてやろう。